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2012年11月18日 (日)

がん治療 / iPS治療 / メタボの治療 / 創薬大国に最も近い日本

私は4年前、著書の最後の章に「日本の創薬の未来」という文章を書きました。
既に市場に出ている薬についてではなくて、ページ数も多いと言われましたが、どうしても書き残しておきたくてお願いした章でした。

なぜなら、日本人は世界の創薬の中でも画期的な発見を何度も行いながら、
その実を自分たち自身が手にすることはかないませんでした。
その後、日本はハードウェアの輸出やハコモノに偏重し、
創薬のようなソフトウエアの重要性を忘れて行ってしまい苦境に陥っています。

創薬やソフトウエア開発に莫大な資金と人材を国家プロジェクトとして投資を行い、何倍もの売上を世界で上げていく国。その一方で、国際共同治験にすら乗り遅れる日本医療への癌研の先生の嘆きと苦言をお書きいたしました(p.250)。

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それでも、最後にこう結びました。
(医療は金食い虫ではなく、例えば)「薬産業はその国の人々を健康にしながら、雇用や利益を生み出す産業でもあります」と。

今でもそう思っています。

日本のガン治療のペプチドワクチンの開発がブレークスルーになり、
熾烈な競争が始まっていることをNHKが特集していました

私が著書を書いているときには、がん免疫療法には否定的な論文が多かった時期であったため、山中先生のiPS細胞(p.244)と分子標的薬(p.193)について触れるだけにとどめました。従来のがん免疫療法とは異なる、最先端のがんワクチンのイノベーションを垣間見て、この世界のスピードの速さに感動しました。

日本にはiPS細胞のノウハウも、アディポサイトカインのノウハウもあります。

がん治療、再生医療、メタボリックシンドロームの治療という物すごく良質なシード(種)植えられているのです。なんと素晴らしいことでしょう。どの国ものどから手が出るほど欲しい物ばかりです。

医療費亡国論とか仕分けといった後ろ向きな考えではなく、
是非、国家プロジェクトとして
これらの種へ適切な水と温度と光を与えていただき、
大きな樹に育ててもらいたいものです。

今あるものを削ったり、否定したりするのは簡単なことです。
今無いものを創り上げていく努力こそ、人間の知性です。

日本の未来はそこにあります。
ハイブリッドになった車やインバータを搭載した白物家電ですら、
今後ソフトウエアがキーを握ることでしょう。トロンだけではなく。

いままで苦手だったら、失敗に学んで上手になればよいだけです。
自分たちの手で
元気よく未来を変えて行きましょう。

医療先進国、医療のイノベーション大国になるのは今日からでも遅くありません。ビジョンを持ち形に出来る力を持つ方々に期待したいものです。

今後、メタボリックシンドロームの治療では、血糖降下薬、高脂血症薬や、降圧剤は脇役に転落することでしょう。そして、メタボリックシンドロームの主役である食欲や代謝効率を指令している脳に働く薬、アディポサイトカインとして働く薬が主役となるでしょう。

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いち早く、メタボリックシンドロームに重要なのは、脳とアディポサイトカインであることを記しておきたくて、未来の治療が進む方向を記すといった側面からこの本を著しました。メタボリックシンドロームの治療の未来は必ずそういった方向に行くはずです。

幸い、そういった未来の薬が開発される前でも、メタボリックシンドロームに関しては、自力でなんとかできることに救いがあります。そこで、適切なメソッドも著しました。

ある人が「先生の行っていることが数年後に現実になっていくよね」と
昨日の学会で言っていただきました。どの世界でも、基本は一緒です。

著書に著していただけに、山中伸弥先生がこれほど早くノーベル賞を受賞されて感激ひとしおです。メタボリックシンドロームの治療も著書に記した方向に、きっとすすむことになるでしょう。

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ドラッグ・ラグや国際共同治験など、未来を作ることへの速度が日本は遅すぎます。その速度の遅さを何とかしないと、個人の努力や頭脳だけでは解決できません。上記の本に記されている戦略の失敗を繰り返している様に見えます。

戦時中、補給路が断たれた中で、目や体を鍛えて戦うゼロ戦の虚無感を感じます。敵機ははるかに性能では劣っていたけれども、レーダーを備え複数機でゼロ戦を撃ち落としに来ました。かつて世界の中でも最も優秀だった日本の海軍はレーダーの意味を理解せず、自滅していきました。グローバルなプラットフォームやルールは常に変化しています。レーダーを使うなんてずるいと言ったところで、何の意味もありません。

NHKでは、がん治療推進のために、個人の寄付を募っていることを放映していました。大切な事ですが、国家プロジェクトで進める国と比べると圧倒的に物量が不足しています。

国家的フレームワークやプラットフォームを、小さくても不完全でも速度早くとりあえず作る必要があります。リーンスタートアップで良いのです。その都度ピボットして適切に舵取りしながら大きくなればよいだけです。

プラットフォームは変化し続けるため、そもそも完璧な計画を作ることは不可能なのです。孤立して自問自答を続けて、自縄自縛しながら矮小化していくことだけは避けなければなりません。

未来を信じてリスクをとって、イノベーションを続けることでしか国際競争を生き残ることはできないのだと思っています。
そういった大人の悪戦苦闘の結果は、たとえ失敗したとしても、全体が破滅するような失敗はないはずです。必ず何かを得ることになる。

失敗からその都度立ち上がる大人たちの真摯な姿は、きっと子供たちに良い影響をあたえることでしょう。

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04.栄養運動医療アドバイザー / 医療コラムニスト」カテゴリの記事