PM2.5と黄砂・3 / 咳喘息と治療
2010年にお書きしたコラムの続きです。
粒子径の重要性
咳がたくさん出たり、息をする度にヒュウヒュウ音がしたりして呼吸状態に異常をきたしてしまう喘息の治療に、吸入薬が用いられる事をお話ししました。以前は、喘息の吸入薬はエアーゾルタイプと呼ばれるスプレー型のものがよく用いられていました。L字型のスプレーの先端を口にくわえてシュッと噴射し、そのガスを吸うというものです。最近はそれに加えて、一定量のパウダーをセットし、吸入するというパウダー型の薬剤も増えてきました。
多くのエアゾル型薬剤は、液体の薬剤とガスが小さなボトルに充填されており、噴射すると一定量の薬剤が粒々になって霧状に放出されるようになっています。パウダー型の場合は、内部に装填された薬剤を一定量削りとったり、小さなカプセルをそのつど開封したりして、薬剤が吸入口に現れるように工夫されています。拙書「知らずに飲んでいた薬の話」の中に、パウダー型薬剤の美しい断面図を掲載しましたが、工業製品としても巧妙なメカニズムを有する優れた形をしています。
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以前はエアゾル型もパウダー型も粒子径は3μm(マイクロメートル)ほどでしたが、最近は気管支の奥まで到達させるために1μmほどの粒子を作り出せる様になってきました。粒子径を小さくした結果、吸入した薬剤の50%異常を肺内に到達させることができるようになりました。
黄砂の表面には化学物質だけではなく、細菌や真菌、ウイルスなどが付着している事があきらかになってきています。そして、その粒子径は数μmです。なんと、喘息の吸入薬と同じ粒子径なのです。そのため、黄砂粒子は“効率良く”肺内に到達してしまう可能性を持っています。黄砂の舞う季節が花粉症の季節と重なっているため、花粉によるアレルギーとされていた方の中に、“黄砂病”と呼ばれる症状の方が大勢混ざっている可能性があるのではないかと考えています。
日本上空を低気圧が幾度も通過し、北風が吹き込むことの多かった今年、急増している咳のひどい患者さんを診察させて頂く中で、黄砂の影響の可能性もあるのでは、と考えています。
ホコリっぽい日には目の細かいマスクが必要かもしれません。
気象病という急激な温度や気圧の変化にともなう体調の変調に対して、
黄砂病は季節病とも言えるものです。
今日は少しバタフライを泳いだあと、同窓の武藤学先生が京都大学の教授に就任された記念講演会を拝見しに行く予定にしています。
おめでとう、武藤先生。
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