原著で楽しむ「Why Nations Fail」2 / 包括的な経済制度 / inclusive economic institution
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「包括的経済」と聞いても、何を包括するの?といって、全くピンときません。
原著にあたると、包括的経済は、inclusive economicsでした。
inclusiveを包括的、と言って翻訳をおしまいにしてしまっている弊害。
英語のinclusiveには、あまねく、とか、どれもこれも みたいなニュアンスがあります。
例えば、inclusive growthを包括的成長と訳しても、何を言っているのかさっぱりわかりません。けれども、ここの説明を読むと、なるほど!と思いました。
経済的に豊かなエリート(高級官僚や王族)だけの成長ではなく、社会の様々な階層の人々に「平等に成長による利益があまねくいきわたるような」成長を目指すことを指し示しています。そしてそれは自由な経済活動に支えられていると記載されています。
「包括的経済」とは、エリート集団だけが閉鎖的に行う経済活動ではなく、「平等にチャンスが与えられている国民たちが行う自由経済」という意味だったのです。
どんな階層でも、全員参加型でそれぞれに応じた経済活動が行えるということ。
inclusiveに相当する日本語が無いために、直観的でない日本語になってしまっていたのでした。うまく訳すのは難しいけれども、高位な人々による収奪や搾取的経済との対義語なので、「国民参加型の自由経済」みたいなことになるでしょうか。
包括的経済は、ひとつのタームとして理解するとよさそうです。概念がわかれば大丈夫。
私達は「包括的」と聞くと、
外側に引いた枠線の内側全部、つまり外→中のイメージをもちます。
外側の線はマジックで書いたようなきっちりした太い実線。
でも彼らは、ある点から隅々まで外側全部、つまり中→外のイメージなのでしょう。
その先に点線的にボヤッとした枠組みが地平線のように見えているイメージ。
発想の違いが面白い。日本人はベクトルが内向き。
違う言語のタームの概念を理解するのは楽しい作業です。
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