イギリス海岸に行きました。
ただの川岸で、なにもないところ、といった話も聞いていました。
ドライバーさんも移住して35年、川底を見たのはわずか2回。真夏の渇水の年。
目標となる場所に指標がたてられていて、駐車場も整備されています。
とうとうと流れる北上川。イギリスのターナーの色合い。この粘土質の河床の色と瑠璃色の川の色のコントラストは関東には無い。小学生のころ、カニを捕っていた江戸川などの灰色の川の色とは全く違う。
澄んでいる幅が広くて、流れの速い川。黄土色の河底が浅いまま蛇行している。
イエローオーカーと深いセルリアンブルーのコントラスト。
ドライバーさんから、色々な話をお伺いしました。
軽便鉄道や、合流する川の話。
僕は、アケボノゾウの足跡ができる仕組みを博物館で見た話をしました。
白い柔らかな層がゾウの体重で黒い粘土質にスタンプされる。
足跡から、豊かな土地であったことを、賢治さんは想像を膨らませていた。わずかな断片から、広い銀河の画像が目に浮かぶ人だった。
思ったより農学校からは少し距離があります。
マントを着て、学生さんを引き連れてここまで来たんだなぁと思いを馳せます。
イギリス海岸の上の粘土のカケラや、猿ヶ石川が合流する河原に降りて、石をいくつか選びました。
美しい水に洗われる石と、イギリス海岸と同じ色のカケラ。
プロコル・ハルムの青い影が聞こえてくる。
この石もまた、銀河の本が置かれる場所にデリバリーされる。
振り返ると、樹木が影絵になっています。
河原で水の音を聴きいってしまい約束の時間を超えています。ドライバーさんを見上げると、大丈夫、みたいなジェスチャーしてどこかに行ってしまいました。
川の音を聴いてじっとしている変な客を独りに放っておいてくれる優しさ。
河原の場所によって、河床の変化によって、渦が変わり、川の音が変わる。
全てを目に見にする必要はありません。その存在を知ることができる。
イギリス海岸は、豊かな場所。
澄んだ水の中に入れた手に写る夕日の網目模様をずっと眺めていました。