『愛と幻想のファシズム』 / なんとか必死に生き抜くために
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紀伊国屋書店で上下巻を数年ぶりに買い直して、また読み返しています。
トウジとゼロが熊を撃ちに行き、冬山の暖かい沼地でゼロがオレンジを食う。
雪は降りしきっています。そこに澄んだ眼をした鹿が舞い降りてくる。
ゼロの破滅と覚醒・蘇生・再生の場面は、何回読んでも美しい。
生き残る本能を持つ者だけが、必死に生き残る。
ゼロは、硫黄泥まみれのオレンジを食べて生き返ります。
鹿やエルクが象徴的に現れます。
人間脳には生物学的に特有の回路があります。だれも、そのハードウエアの呪縛から逃れることはできません。学研のサイトでもお話ししたことがあります。
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その一つに、『知ってしまう前には戻れない』と言う物があります。
村上龍さんは、年齢を重ね、カンブリアもやって色々な事を知ってしまった。
彼が描く世界は、とてもいいけれども、知らなかった昔にはもどれない。
けれど『愛と幻想のファシズム』は、そのまま残っています。
いや、村上龍さんの思想は変わっていないかもしれない。
この世に生を受けたなら、どんな立場でも
『生き残るために必死に生きろ、それを忘れた人間や国家は滅ぶ』
そのメッセージだけを発信し続けている気がします。
生きるに困らないから、何かに依存しているだけなら、『培養』されている『奴隷』に過ぎない。間違ってもいいから、自分で考えて『主体性をもってサイバルする』。野生の動物が普通にしていることを、思い出せ。そういった勇気をもらえます。
変化を続けない限り滅んでいく。勇気を持ち続けて変化を続けて明日を迎えることでしか、未来はやってこない。今日が大丈夫だからと言って、同じ事を翌日もあさっても続けることは緩やかな破滅でしかない。
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25年前に村上さんが見通した『5分後の世界』の日本と、現在はよく似ています。
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