美しい黒い蝶の誕生 / 新しいのちの始まり / 生き物が教えてくれること / カラスアゲハの朝
クリニックで、蝶のさなぎを守っていました。
ずっと何か月も動かないし、最近は黒っぽくなってきていて、「ああ失われてしまったんだ」とおもっていました。
ところが、今日、のぞいてみると、なんと羽化していました。
大きな黒い蝶が一頭。
モンシロチョウだと思っていたので、びっくりです。
昨年、蛹の形から、蝶を探したけれど難しかった。
粗大ごみを捨てる門に蛹として付着していて、このままだと扉がぶつかったり、気が付かない人が荷物で押しつぶしてしまう危険な場所。
数日見守っていたのですが、気になってしかたがないので、脱脂綿と無菌培養用の検体容器をもって回収に行きました。
頭部と尾部が糸でつながっていたので、蛹を傷つけないように回収。脱脂綿でくるみ、パタゴニアのリュックのクッションがあるパーティションにいれて、満員の中央線の中を守り抜いてクリニックに到着。アクリルのケースも購入しておきました。
昨年の11月。
クリニックで清潔なペーパータオルの上におきました。横にしていてもよい、と情報をえていました。湿度を保つため、小さな多肉植物を側において、植物やペーパータオルの隅にスポイトで湿度を与えることにしました。
生きていると少し尾を振る、と言われているけれども、ピクリともしませんでした。
あれから、半年近く。
羽化したときを思い描いて、羽根を伸ばせる棒をいれたり、蛹に直接水がかからないように湿度をたもったり。スポイトで水を1-2滴多肉植物に与え、ときどき、足場の棒を調節したりしてずっと見守り続けてきました。
昨日、黒くなってきていて、ああ、真菌や寄生生物にやられて傷んでしまったんだ と少し悲しかった。
羽化直前だったことが、今日わかりました。
人命を無視し、生命を生み出す女性をないがしろにしつづける行為に、大きな批判があつまっています。昨日、クリニックにいらした若者と、少し時間があったので、いろいろ話しました。いつの時代か、と。
彼女たちは、自分たちをないがしろにした人々にそっと静かな報復を始めることでしょう。恐ろしい。医療機関では、女医さんと看護師さん女性陣はとても優秀なうえに怖いので、救急でも頑張って仲良く働いてきました。
女性が、命をつなぐことは揺らぎない事実。
命は一つずつ、大切にしなくてはいけない。その原則を外れると、不毛の砂漠しか残らない大地になっていきます。僕は、女性のコンディションを整える外来を行い、未来を作る若者たちを応援してきました。子供とお母さんを守る保育士さんたちも応援してきました。
それが、豊かな未来を拓くと信じていたからです。
大きな黒い蝶。
マメルリハとともに、生き物たちは、「命を守り続けることの意味」を教えてくれます。
様々なものを、昨年末からそぎ落としてきました。
でも、その代わり僕たちは、新しい何かをクリエイティブに何かを生み出していけばよいと考えています。今目の前にはしていない、何か。美しい黒い羽根も、今日までは目の前にいなかった。
そういったことも、小さな命の結晶である蝶が教えてくれます。
検尿用の紙カップにブドウ糖液を薄めて入れて、ペーパータオルを入れました。うまく、吸ってくれることを願っています。生きてくれれば、2-3週、命を共にできる。外に放つには、花がまだ咲いていません。早咲きのタデの花もまだ。目覚めた野鳥のえさになるだけでは、悲しい。
ゆっくりはばたくアモルファスの美しい羽根を、山田先生と眺めていました。
この蝶は、カラスアゲハのようで、都市には珍しいようです。
柑橘類が散在してるので、そこで生息していたのかもしれません。
大きくて美しい蝶です。
以前、より大きなカラスアゲハをミカンの木を買って、そこで育てて夏空に放ったこともありました。
僕は生き物に囲まれていると、落ち着きます。
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