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2018年6月17日 (日)

about designs in our era / 『人形の国』/ 未来のデザイン

人形の国(1) (シリウスKC) 人形の国(1) (シリウスKC)
弐瓶 勉

講談社  2017-05-09
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〝人形の国〟 を読んでいます。いつもながらの、その世界を理解するまでに時間がかかる感じ。BLAM!では、90時間とか200時間とか人間世界では理解できない時間軸の中でおきるお話でした。

BLAM!やシドニアは大きな綺麗な本がありますが、人形の国は普通の文庫本サイズのものだけです。

Ningyounokuni シドニアの騎士は、宮崎駿さんのナウシカが持つ〝しっとり感〟漂うものでした。弐瓶さんは、だんだん画が白くなっていっている気が。独特の乾いた感じで、砂が舞うブレードランナーの雰囲気になっています。

〝転生〟に必要な〝コード〟の小型機械が附属でついてきます。

僕らが子供の時には、大切なものは複雑な形をしていました。また、宇宙船も羽がついていたりロケットや飛行機の延長線上にある形態をしていました。

今では、さらにデザインが進化して、全くデコボコの無いデザインになっています。BLAM!のシボがであう統治局も、〝巨大な白イカ〟のような、脳幹部の形をしていました。また、シドニアの騎士のシドニアも内部に水をたたえるただの棒状の形をしていました。

人形の国のコード機械もそう。エナや超構造体、重力子放射線射出装置もそう。

僕は、昔がいいなんて少しも思えない。昭和生まれの回顧主義の会に誘われたことがありますが、僕にはぜんぜん魅力的には思えなかった。同窓会も意味がわからない。若い先生と最先端の医療の話ししているほうが、ずっといい。

TVで懐メロが流れると、MACのitunesからbluetoothで飛ばしてBOSEでお気に入りの最新曲に切り替えることにしています。アコースティックに聴こえるような、コンピュータで作った曲の方がずっといい。

どんどん新しいアーチストが登場してきている。

青山フラワーマーケットのお姉さんと、同じような会話を最近しました。
〝昔のフランスのハガキの様なクラシカルな色が流行っているんですね〟と尋ねてみました。そう思ったから。
〝そうなんです。でも、違うんです。一見古そうに見える色や形の花ですけれども、実は最新の技術で交配を重ねて生産しているお花も増えているんです〟と。

技術をテカテカには誇らないスマートさ。

技術を誇って、いかにもという風にテカテカにする時代は終わりました。真っ赤なスポーツカーがジャンプしたり水に潜ったり、ヒーローが一方的に勝利する時代は終わりました。もう皆が、そういったものの先にいる。子供ですら。

今だったら、〝無人の山道を走っていたポンコツの軽トラが、ボディの金属を変化させた粘性のある物質で密閉性を確保し質量をへらして、気流や生き物を利用し、そらへ駆け上がっていく。軽トラに積まれた柑橘類が、空に落ちて舞い、それを光学迷彩の皮膚をもっている見えなかった獣が食べる〟といった自然界のもつ複雑さを理解したスマートな物語りになることでしょう。流線型で無い、ボタボタの形でありながら、原子構造を変えて自然界に存在する道理を理解する最先端。

もちろんハンドルやインパネは戦闘機風に形態変化する。あるいは、物は無く網膜に投影されるだけかもしれない。運転手は、コケティッシュな女子。横に乗っている男子は、無力に驚くだけ。もともと、コンピュータ化された作業機をつかって林業の力仕事をしていたのは女子だったと。か弱く冴えない男子の代わりに。

ヒーローは死滅しました。だれも、〝俺が〟という人には、あこがれない時代。それぞれがSNSで発信できるので、個人間で平等で水平に比較される無数の世界。格好悪くて、〝俺が俺が〟なんてアピールすることはできない。

選択枝のないブロードキャストが支配していた時代とは違う。ヒーローが存在しえない、あるいはヒーローの存在理由も失われていて、それがために登場してくるヒロイン。

最新技術、最先端のガジェットをひっそりと隠すことができるようになりました。

ただのか弱い秘書さんかと思っていた華奢な女性が、電脳で宇宙を見ている。危機を察知し、胸にさしたペンをとりだし内蔵されたレーザーををビル内から天空に放射し、宇宙まで貫通する。世界中に散る役割を担った女性たちの意見が閉鎖電脳SNSで一致する。すると、宇宙に待機していた衛星が回転し連携しながら、近づいてくる敵艦隊を全て焼き尽くす。彼女たちは確認後、CEOの秘書業務にもどったり、日本ではオヤジへのお酌をイヤイヤ続ける。何が起きたか理解できない大笑いしているオヤジを眺めながら。人知れず継続される平和・・・

技術の進歩は、小さな作業量で巨大な結果を生み出すレバレッジを保証するようになりました。華奢な女性でも、強大な力を発揮することができます。実際、クリニックにいらっしゃる巨大な作業ロボットのSEさんは、とてもかわいらしい小さな女性です。今は、統合される白物家電の電脳のコードを書いているそうです。

女子の方が、全員とは言わないけれど、総じてルールに厳密で賢く真面目。技術のレバレッジが利く未来には、獲物を捕るために腕力は意味を持たない。腕力の優位性が失われたあとの世界のため、男子は生き方を変える必要があるかも。筋力を無効化する小型の電子筋弛緩ガジェットを女性の腕などの生体内に携帯できるようになれば、彼女たちも安心かも。逆に、男子を捕獲し捕食する狩猟者ハンターになるかもしれない。無敵。

また、医療もしかり。工学部や生物理学の先生が設計した手術道具や遺伝子、マイクロマシンで人を治す時代ERAになりました。僕ら医師も、それに沿って形を変わらざるを得ない。彼らと協力することなしに、治療はできない。医師は、人体を知り人の心を癒やす技術者のカケラの一つとなっていくことでしょう。ヒーロー無き時代。

なんて素晴らしいんだろう。

〝水平的協力〟と呼ばれるものです。horizontal concurrence 。作業によって、協力者のメンバーが自律的に入れ替わるシステム。恣意的な意思や意味を排除するため指導者や、オーガナイザー、コンサルタントは不要。自分たちが考えて、自分たちでチームを作るギルド集団。 人間社会のデザインのひとつ。

工学部の先生に医師が呼ばれてチームを作る世界がもうすぐやってくる。医師の仕事も、きっと変化していくでしょう。僕らは、職人の一つ。

未来に期待している。若者が切り拓いてくれるデザインに期待している。ずっとカッコイイものが、彼らの手で作られ紡がれていくことでしょう。

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