今日は、とても暑い日でした。
こんな日でも、様々な病院で医師たちは働いています。
テレビなどで、得意分野で無い先生方が、コメントされることも多くみうけられるようになりました。
やはり、メディアはその分野の専門家をつれてくるべきだと思っています。コメントの「深さ」がちがう。
コメンテーターさんたちの自由なトークに応える形で、視聴者に正しいことを伝えられる経験からくる深さが必要です。そういったことは、台本に書かれていません。だから、経験豊かな医師が「深さと奥行き」を持つ答えをすべき。
一方、番組を作るプロデューサーさんたちは、そういった実地診療をしている医師にアクセスする方法がない。だから、僕は、尋ねられていたメディアの方に、正しいことをお話ししてくださる救急診療部の先生など、複数の先生を紹介しました。
でも、どうなるかは分からない。僕には、聞かれた部分に答える能力しか無い。
同時に、医療連携室や地域医療対策連携室を介して、大学病院や、総合病院の広報にもアクセスしています。そういった基幹病院の能力の高い先生方からコメントをもらえるように、数年前からアレンジを続けてきました。僕に来た仕事でも、より適切な先生にパスできたこともあります。直接彼らにアクセスしたものも多いでしょう。良いこと。
こういったものは全て、ボランティア。お金がからんじゃダメ。現場で一緒に働いた気持ちでつながっていたことが、羅針盤として正しい星を示す。そう信じている。僕は、患者さんを拝見することが軸足だし。医学会でお礼を言ってもらえたこともあります。それで十分。
プロューサーさんなどTVのスタッフさんは真面目。医療のことには素人なので、医師のコメントの質を精査できない。徹夜続きの上に、いわれっぱなしで、かわいそう。最初から、キチンとした人に出会えば、彼らの苦労も減ります。
救命救急センターや集中治療部で働く彼らは、本当に沢山の人々、沢山の種類の病気をみています。呼吸や循環が止まった方もいらっしゃいます。目の前で、呼吸状態が悪化して息が止まってしまうことがあっても、チームで最善をつくす。
熱中症の方も運び込まれるし、冬には低体温の方も運ばれてくる。かつて、都立病院で働いていたときに、僕らは、低体温になって重症肺炎も合併した路上生活の方をケアしたこともあります。
呼吸障害や循環不全、ウイルス性心筋炎による心不全、肺炎などの感染症、熱中症、低体温症、外傷、ECMOや緊急透析など、命に関わる病気のコメントは、これからは、専門の彼らがなすべきだ。
実際、電話で、「今(15/08/2018)どんな方々が運びこまれてるの?」と聞いたら、なんと、「心筋炎による心不全と二次性の多臓器不全」と言う答え。彼らしか観られない真実がそこにあります。
クリニックで口蓋のアフタや頭痛、一過性の肝障害の人が沢山いらしていて、「たぶんウイルス性だから抗生物質いらないです」を繰り返していたことを思い出す。
病気特有の症状がない心筋炎は、診断に難渋する。カゼ症状でいらした若い患者さん全員に、心電図は行えない。コストの面からも。
そして、抗ウイルス薬もない。壊れていってしまう心筋を、僕らは守る術は無い。劇症肝炎の肝細胞も一緒だ。僕らは、全身管理をして待つことしかできない。本人の免疫力が上がりウイルスが駆逐され、組織が修復され機能が回復するのを待つ。
溶連菌だけでなく、コクサッキーが密かに流行しているんだろうと思う。猛暑で、免疫力が低下しているのか。
彼らは、厳しい現場の中で、全てを観ている。彼らなら、メディアで適切なコメントをしてくれるに違いない。
視聴者は、「素晴らしい医師」を望むよりもより現実的な路線をもとめるようになった。情報を集めて、真実を精査する能力を備えている。
メディアを使って幻想を作り出し、様々な派生もので商売をするというビジネスモデルは、すでに終焉を迎えている。アイテムも直ぐに忘れられる。メディアの種類が無数に増えたことにも関係しているかもしれないし、市民が賢くなったからかもしれない。
未病の視聴者も、患っている患者さんも、これまで、いろいろな物を捜して調べてきたし、経験も繰り返してきた。同じ手は通じない。常に現実の中で生きている。
もう少しすると、メディアに出て説明する医師の質のパラダイムシフトが起きるだろう。少し前、メディアや新聞の方に、オフレコで勝手に第一時代から第四時代まで分類して、やがてやってくる第五時代についてのお話をしました。
人々は経験し、情報は記録され歴史から人々は学び、世の中は進化します。良い事です。
今日は、正しいことをお話してくださるとおもわれる複数の先生をご紹介しました。仲良しの先生に電話して、お願いもしました。そういった情報を、番組の枠を越えてそれぞれのメディア内で共有して頂くようにお願いしました。
メディアのスタッフの乱雑な部屋には、共用ファイルや、ホワイトボード、電話の傍のノートなどがあります。あるいは、別番組のスタッフに人づてできいて対応したりしている。社内の人が、制作会社にファイルのコピーを渡すだけでもいいかもしれません。
少しずつ、作業を続けて行こうと思っています。僕の信頼できる知り合いの先生方やお世話になっている病院の範囲内。半年ぐらい作業を加速させているので、そんなに時間はかからず、いったん終了がくると思う。
メディアが今後どう変化するかも分からないし、先生方も「できるだけガンバルけど、その時の状況による・・・」とおっしゃられていました。後は、彼らが判断して、番組を作っていく。
きっかけさえ、何かの「ガラスの天井が破られさえすれば」、次の世界がやってくる可能性が高まる。
人生は、何らかの可能性が高まることを願って、繰り返し行動を起こすことの繰り返し。ムダなことだっておおい。でも、それが生きる、ということなんじゃ無いんだろうか、と思う。
人々に正しい情報を伝え、役にたっていく、というのがメディアが持つべき側面の一つのはず。僕は、多くの人にアナウンスできるメディアの人に、その軸足を忘れないようにしてほしいと願っています。
救急外来と集中診療部を束ねる古くからの友人の先生の一言が、忘れられない。
「数年前は、熱中症で亡くなる人がいた。でも、今年は、なぜだかみんな気を付けているみたいで、いまのところ重症の患者さんは運び込まれていない。メディアのアナウンス効果って、大きいね。今年が一番暑いのに。(まともなコメント)ありがとう。」と。「次は、君がしゃべる番だからね。」と僕は答えました。
きっと、僕は、今後、依頼があれば彼を推薦するし、良い仕事ならそのままパスできるだろうとおもう。どこかの医師が作った造語の解説や、医学書に存在しないどこかの先生の独自理論の解説なら今までどおり断りつづけるだけだ。忙しい彼らを守る必要がある。みんなで、建設的に生きていける。
僕自身は、様々なメディアへ医師を紹介する企業は断りつづけている。自然に最適な医師が登場するようになるんだろうと予測する。
呼吸障害や循環不全、ウイルス性心筋炎による心不全、肺炎などの感染症、熱中症、低体温症、外傷、ECMOや緊急透析など、命に関わる病気のコメントは、これからは、専門の彼らがなすべきだ。そして、病院は、キチンとした情報をしゃべれる自分が雇用する医師をバックアップすべきだ。
メディアから依頼のあった医師に、時間を作ってあげて市井の人々をまもることも病院の仕事の一つだろう。手が離せないこともあるだろうから、誰が話すか、決めておいてもいいかもしれない。基本は広報の仕事だけれども、その病院と他者をつなぐ医療連携室の仕事かもしれない。有機的につながる必要がある。
報道系の番組の場合、依頼を受けてから時間が無いことも多いから会議をしている暇は無い。時間を短縮して対応する方法を、あらかじめ作っておくべきだ。全て断っても良いかもしれないけれど、せっかく病院が人々の役にたてるというのに、もったいない気もする。
つまらない沢山ある院内会議の一つぐらい、そういった対外的なものに備える議題に変えたって影響は少ないだろうし、建設的だろう。大きな会議室の座り心地の良い椅子に座る直明けの重責のスタッフ。大きな机の前での居眠りも減るだろう。いびきと無呼吸を他人に知られることも無い。
そして、救急車の到着を待つ間、寒い裏庭の桜の枝の間から見えた北極星を思い出す。医師の悲しさと孤独を感じつづけていた僕には、こんなことしかできない。
インフラとして現場に踏みとどまって休まず作業を続けている現場の医師たちを、心から尊敬しつづける。あさっては、大学病院と話す日。
大人は、正解の無い世界でもがきつづけるものだ。