電車の中の大きな蛾モモスズメを逃がす
朝、電車に乗ると一区画だけ人がいない場所がありました。
3密の予防? と思ったけれど空いていたのでその空間に移動。
最近は、一つの座席に一人しか座ってなかったりします。
つり革に使わまって、横を見るとスズメガが止まっていました。
でかい。
立派なスズメガです。モモスズメのオスのようです。カイコと一緒でおとなしいけれど、びっくりするとはばたいて地面に行ってしまう。踏まれたり、車内を追いかけることもできない。通勤中だし何も持っていません。
左側にとまっているスズメガを見ながら、よく考えました。彼も困っているはず。郊外の森から出て涼しくて暗い場所を探していたら、どんどん新宿に行ってしまうなんて。女性たちはみんなよけているし、今、この車両で虫と仲良しなのはたぶん僕しかいない。
予備のマスクがあったことを思いだしました。ノーズワイヤをまげて下部を手で押さえると、ちょうどよい空間を作れました。
スズメガは後ろ側が死角になっています。尾の方から近づいて両方の羽根を下から押さえてしまうと、彼らはばたつきません。
大きいけれど、基本おとなしい。
無事捕獲して、次にドアが開いたときに人に踏まれない場所まで急いで運んで放しました。
マスクには、残った鱗粉だけ。
時間が無くて、マスク内の蛾を写真撮影はできませんでした。
でも、マスク内の蛾を上から見下ろしたとき立派な触覚がとてもかわいい感じでした。
彼の複眼と目があった気がします。
スズメガや 扉ひらかれ 夏空へ 優仁
モモスズメにとっては虫に慣れた人の車両にのりこんだことが、自力では開けられない扉の向こう側へ行けるチャンスにつながった。彼の運も能力のうちです。そう思うと、彼が扉を切り拓いたと言っても良いかと思いました。
俳句は、自然現象の中に心象風景をうたうものです。通常は熟慮して風景を重ね合わせます。今回は、大急ぎで捕まえて放つという素早い作業の“疾走感”を素直に記しました。
慣れない車両の閉塞空間から、真っ青な初夏の自分の空にあけ放たれて飛び立つ風景。
脳の中に、まっすぐな方向をもった直線を描くことも俳句の大切なところ。
どんな時も、その場で環境に適応して全力を尽くすこと。
存在し続ける間、最大のパフォーマンスを上げる努力を続けること。
医療、文章、絵、俳句・・・みんなつながっている気がします。
それを夏のモモスズメは教えてくれた気がします。
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